本のレビュー『僕にはイラつく理由がある!』
最近はADHDなどの薬を調剤する機会があるため、発達障害関係の勉強に力を入れています。
漫画家で息子さんが発達障害があるかなしろにゃんこ。さんが書いている本ですが、これが読みやすくて参考になる内容でしたのでご紹介させていただきます。
本の概要
注意欠如多動性障害(ADHD)と軽い自閉症スぺクロラム障害がある息子リュウ太君を持つ漫画家が成人になったお子さんに『発達障害がある子が小学生の時に思っていたこと』を聞いていく本です。漫画ベースで話が進んでいくのですが、柔らかいタッチの絵で非常に読みやすいので、発達障害のあるお子さんを育てているご家族やかかわる医療関係者・保育士や養護教諭など幅広い方に非常におすすめな本です。
発達障害のある子供に『どう思っているの?何を考えているの?』と聞いても本音を引き出すのは非常に難しいと思います。一つの例として子供がどのように考えているのか?を知ることで、相手の理解につながることもあるかと思いますので参考になると思います。
大まかな流れ
①作者とリュウ太君(息子)とのエピソード(漫画)
②臨床心理士から、そのエピソードでは発達障害の子がどのように考えているのかを解説
③臨床心理士から、そのエピソードでの良い対処法を伝授
以上の流れです。
当時のエピソードを面白おかしく書いた漫画から入り、話を理解したうえで専門家の話が出てくると読んでいて飽きない本です💡
内容を紹介!「case6 人の気持ち、わかるかな?」
漫画のエピソード
リュウ太くんの友人がしばらく貸していたゲームを返してほしいと自宅に訪ねてきました。それに対しリュウ太君は玄関先で「はい、ゲーム」と渡しただけでそのままドアを閉めて友人を追い返してしまいました。
母親からすると「長い間借りててごめんね。」とか一言いうもんじゃないの?と詰め寄りますが、リュウ太君は『友達はもともと怒らない性格だから大丈夫だよ。実際起こってなかったじゃない。』とそっけない態度。
『うちの子は人の心がわからないのか』と悩むお母さんに特別支援学級の経験のある先生から、ドラマを見ることでいろいろな人の感情を知ることができるとアドバイスをされていろいろなドラマを見るようにしたそうです。
ドラマを見ている途中にリュウ太君は「この人ってなんで怒っているの?」「この人の子の行動は悪い人だからするの?」などいちいち聞かれるので落ち着いてみれないとのことですが、質問が出るということは興味を持っているということなので付き合ってあげてどう思ってその行為がされるのかを丁寧に教えてあげたそうです。
この本の面白いところは20歳のリュウ太君に後日談を聞くところ。
母親目線ではドラマを見ることによって人の表情や行動から気持ちがわかるようになってきた!と喜んでいたのですが、実は人の感情パターンを覚えていたとのこと。
怒っていても相手を心配して言うパターンもあれば、遠回しに言ったりなどコミュニケーションをパターン化して覚えていたそうです。
友達との約束を忘れてしまった→「ごめん、うっかりしていた。今度埋め合わせするね」というセリフを覚えるって感じです。
冒頭のゲームを借りたエピソードは、「長い間借りてごめんね」という言葉が必要ということすら思わなかったし知らなかったんです。
本当に相手の気持ちに立っているとは言えないかもしれませんが、それが必要だと理解して友人との関係が円滑になるなら良いことですね😊
リュウ太くんはアルバイトや初デートなど学校以外の場所で出会った人の影響で人の気持ちを理解していったと言っていました。
臨床心理士からのアドバイス
発達障害の子は「薄情」なのではなく「気持ちの読み取り」が苦手で時間がかかってしまうのです。
目に見えないものは「ない」ものと同じでそれから基地を読むのが苦手とのことでした。
例えば人の笑顔一つでも、目・頬・口など様々な情報を総合して相手の気持ちを察していきますが、どこに注目すべきかわからん!ってのが発達障害の子の特性です。
色々なところに注目するのが疲れてしまい目をそらして話した結果「失礼な人だな」と言われてしまうこともあります。
親のが子供の気持ちをわかってあげあれないと悩む人もいるが、発達障害の特性として自己表現が苦手なこともあります。わかってあげられないのはつらいですが、親の責任ではないことを理解して気持ちを伝える工夫などをしていけばよいと思います。
臨床心理士からの工夫とヒント
①ゲーム感覚で一緒に学ぶ
『気持ちのわかるカード』などを使用してクイズ形式で学んでいく。
②アニメや漫画も活用する
ドラマも良いですがアニメや漫画もお決まりのやり取りが繰り広げられるからおすすめです。
③「教えてもらう技術」を子供に伝える。
発達障害の子供から相手に対して「ごめんなさい、どんな気持ちかわからないから教えてください」と素直に聞いてよいことを教える。
④子ども自身が自分の気持ちに関心を向けてもらう
自分の気持ちに気づけてない子も多いです。悲しそうなときや怒っているときに「悲しかったね」「イライラしたね」と言語化してあげることで理解につながるかもしれません。
薬剤師が見た本の感想
発達障害に関して、ADHDにはストラテラやコンサータ、インチュニブなどお薬の適応がありますが基本的な治療は非薬物療法となります。
薬を飲んでいてある程度落ち着くことができても、その子の特性がガラッと変わることは難しいので子供ごとの特性を理解しかかわる際の言葉遣いや環境の整備など色々と工夫していく必要があります。
発達障害の子供と向き合うのに対して大事なことは、自分(親)や世間一般の価値観で考えずにその子なりの価値観や考え方も理解してあげることだとおもいます。
そういう意味ではこの本の様に一人の子供がどのように考え、何を苦手としていたのかを聞くことで自分がかかわる子供の理解につながる可能性は非常に高くなると思います。
最後に
case6をご紹介しましたが、「case1:話し出すと止まらないのはなぜ?」から「case9:叱っても行動を変えられないのはなぜ?」まで9のケースで話が進んでいきます。
病院で診断を受けていなくても、勉強が苦手だったり会話がちょっとちぐはぐだったりと少し心配な方も読んでみると参考になると思います。
Amazonのレビューをみると「旦那さんとなんか話が合わなかったけどそういうことだったのか!」といった大人の発達障害と付き合う人からの声も上がっておりました。
本が気になった方、薬局に置いてありますので是非お立ち寄りください!処方箋がなくても大丈夫です。
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